昨年の出来ごとを今更載せて恐縮です。
小雨降る、昨年12月4日。姫企画6の渾身潜入ルポを掲載。

 11月の姫企画5の大盛況をうけていよいよお江戸にて開催。奇跡の寄席・大須演芸場。奇跡の存続ゆえ、その風情もまた実地に足を運んだ者でなくては把握不能な“曰く言いがたいマニアックさ”がある。
 本会の趣旨はその“濃さ”を濃いままに東京の舞台へと運びこむというもの。お江戸ゆえに、つい背伸びをしてしまったり、また上げ底を試みたりといった逸る気持ちの一切を“無駄”と排し、マニア固有の琴線への刺激のみを狙ったというのが本会の焦点である。「採算無視」の姿勢もまた演芸場スタイルを踏襲していることは言うまでもない。


 “濃い大須演芸場”の名刺代わりにと、受付けでは伝説の“大東両熟成釜飯”(特別価格・なんと1個10円!!)を限定3個で販売。
 このマニア垂涎のアイテムも予想通り即完売となった。ちなみに製造は91年7月17日である。

こちらは開演前の楽屋風景。記念の色紙に小福師匠がサインをしております。体調不良の中、お江戸で待つ演芸ファンを悲しませてはならぬと気合の参戦である。

恐らくネット公開初、雷門小福サインだ。
笑の文字を笑顔にする手法は小福の師、雷門福助師から受け継いだものである。

 容赦なき演芸場再現はもちろんこの企画の首領・大須演芸場専属お茶子“姫”とて同じ。これが仕事場のユニフォーム。大須ういろの半被だ。お洒落二の次、再現第一。

 さぁいよいよ開演間近でございます。いい画ですな、まったく。
 

開口一番、開口一番。着替えねばって、ユニフォームに着替えねば。それにしてもユニフォームって勝てばそれなりに格好良く見えてくるものだけど、このユニフォームだけはその兆しが一向に見えてこないのは何でだろう?
「なんだぁ!? お前今日は落語やらんのか?」と小福。
「いいえ、これで落語をやりにいくんです!」
首かしげておりました。

開口一番。ど頭で大須演芸場演歌部門仲間・宝生松子さんの持ち歌「♪いりゃあせ名古屋」を熱唱。歌詞が覚えにくい。歌詞を追うのでいっぱいで歌唱どころではない。
これを聴いた大東両先生、楽屋で「いやぁーあんたぁ! あんたが東京で唄ったときいたら宝生さん、泣いて喜ぶがねぇ。わしゃ、会った時によーく本人に言っとくからな。いやぁ、あんた・・・!」
って、言わないでください。お願いですから。写真はそのカセットテープを手に宣伝しているところ。独楽回し先生! 借りたテープはこうやって役立っているのです。

 もちろん期待の演芸場オリジナル、KAPPA文字めくりもお江戸進出。これあるとないとじゃ、かもし出す風情が湧き上がらない。無駄に近い執念とはいえ。

 落語やってるのにこの人なぜか最後はユニフォーム。
「名古屋に行って、あいつはダメになった」の典型に近いモノをこの画だけ見れば察するに十分といったところですが、何事にもめげずに精進いたします。

一年通じて仕事の98%が大須演芸場という本日のラインナップの中では唯一東京の芸人、漫才の夏子。
15分のはずの出番が、どっつべりの危機脱出にと10分に短縮。お後の小福師が名古屋に戻ってからぼやくぼやく。「あの夏子がよー、時間守らんもんでよー・・・」と。

さぁーてそろそろ出番だがや。
お江戸での落語は12〜13年振りだとか。
「花のお江戸で落語をやるのもこれが最後だなぁ」と一言。

 冒頭、「弟子二人。高いところからではございますが、これからもよろしくお願いいたします」と深深とお辞儀。マニアな会にあって、最も印象深いワンシーンであった。

 アップでないとわかりませんがこの日の師匠は目の周りが、薬の後遺症か何かで腫れ上がっておりました。前日の上京の予定が直行直帰に。
 十八番の「仕立ておろし」を一席。

幕が閉まってお仲入り。
「おい、足がしびれてまってよ〜、立てんがや。幕が閉まってくれて助かったわぁ」とのこと。かなり無理しての上京であったことが伺える。この後お約束通り東京駅へ直行。東京にいた時間、事実上5時間!!

雷門獅篭。邪気のない笑顔だね、まったく。というのも、かつての地元、高円寺への移籍後最初の凱旋ですからねぇ。お江戸での月例会は隔月となってこの地で行われるのだという。

 十八番の鮫講釈。抜群の安定感。エロいいや、偉い!! 天才!! 貴公子!! 色男!! これくらいでいいですか?

 出たぁー!! よっ、大東両!!
 私が大須に上がったのが2003年の9月上席。師が20年ぶりに演芸場に復帰したのもその9月上席。当時は普通に浪曲をやるだけで楽屋の夏子ちゃん(現・ジャックポットと限定改名)と「一体全体、どこがどう伝説の芸人なんだ?」と言っていたものだが、徐々にそのベールは明かされた。
 師はものの見事な伝説の“紙業”紙切り師であったのだ。
 まずは名刺代わりにじょんがらにのせて、軽い身のこなしによる芸の披露から。

舞台見れないから何を切ったか知らないが、確かに凄い。
まさか伝説の釜飯までもが上京してたとはこの紙業師ですら分かるまい。
ところで、あのエロも切る紙きり師・泉たけし師の師匠がこの大東両師その人であったとはちっとも知らなかった。

本日のトリ。当演芸場の最古参にして精神的支柱、名古屋弁漫談・伊東かおる先生の登場である。定席ならトリは落語じゃないの? いいえ、いいんです。ここは大須ですから!!
お江戸で大須を再現するならかおる先生の参戦は不可欠と当企画の首領、姫からの強い要請を受けての電撃参戦。実にマニア且つ貴重な会である。

 りりしいけど、実際見るとかなり小っこいよ。
 シュールの極みといってよい、自虐ネタの王道を行く孤高の芸人。ほとんどがノンフィクションなのでそのシュールさはまさに魂の域に到達。
 ただ残念かな、定席では毎回登場で歌う名曲「♪男のきず」が披露されなかった。唯一くいが残った。

 随分遅くなったが、以上が姫企画6の顛末であった。会終了後こみ上げてくる自虐的達成感を抑えることができなかった。
 この進出企画が恒例となるか否かは定かではないがしかし、次回があるとすれば沸きでるマニア度を極力抑え、幅広い世代に喜ばれる会を心掛けることとしたい。一部マニアの期待は本会で一応の達成をみたのではあるまいか。
 ちなみに掲載した写真の数々は当日お越しをいただいたプロの写真家によるものであります。いつものデジタルビデオからのキャプチャーとは違い、風情があるのはそういう事情からであります。ここに感謝申し上げます。

 さぁーて、そろそろ7を考えるか・・・。
(マニアな観衆58名)

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